◆令和のはじまりとともに思うこと(組織長の大切な役割とは)
いよいよ「令和」の時代が始まりました。
4月末から今月初旬にかけてさまざまな式典が行われました。
いろいろな思いを持ってご覧になられた読者も多かったのではないでしょうか。
少し前の話になりますが、4月1日に新元号「令和」が発表されて以来、この話をメディアで見ない日はないというぐらい「国民的話題」になりました。
例えば、令和の出典は何か、令和という元号はどこの誰が考えたのか、どんなプロセスで決まったのか、反対したのは誰か、他の5つの候補は何だったのか・・・・等々。
そのようなワイドショー的な話ももちろん面白いのですが、個人的にもっと注目してとりあげ、その意味を考えるべきであると思ったのは、安倍首相による首相談話でした。
「なぜこの令和という元号にしたのか」
「令和という元号にどんな意味を込めたのか」
「この先どんな未来にしたいのか」
といったまさにトップが出すべきメッセージであると思えたからです。
(*お断りしておきますが、政治的な賛成反対の意見を述べるつもりはありませんし、内容についてもこれ以上触れるつもりはありません)
あえてこの話題を取り上げたのは、ビジネスの世界でも、そしてそれが管理職(組織長)クラスの仕事であっても、このように「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」ことは組織をリードする者の最も大事な仕事の1つであると考えるからです。
我々がお客さまに提供している360度フィードバックの設問例でいえば以下のようなものでしょうか。
「自組織の方針や目標を定め、目標実現に向けた戦略を打ち出している」
「組織のありたい姿を自分の言葉でわかりやすく語っている」
(※あくまでも例です。お客さまの課題や強調ポイントによって設問内容や表現は変わります)
しかし、お気づきの方、実際にお悩みの方も多いと思いますが、これらを実行することは簡単なことではありません。
◆なぜ「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」ことはそんなに難しいのか◆
大きく3つの理由があると考えます。
1つめは、「個人任せになっていること」。
多くの組織長にとって、上述したほとんどの行為は組織長になってはじめて行うことであるにもかかわらず、OJTで上司が懇切丁寧に指導してくれるなどということはほとんどなく個人任せであるということです。
(組織長就任前に権限委譲され上司の仕事の一部を担うケースもありますが、多くは後輩指導などの業務に限られ、「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」に類することを任されることはほとんどないように思います)。
2つめは、「忙しいという理由で、後回しにしてしまう(必要性を強くは感じていない)」。
プレイングにそしてマネジメントにと目の前のことに追われるあまり、入社以来慣れ親しんだ「プレイング業務」や、中堅社員時に経験した「メンバー指導」といった業務を優先しがちになるということです。
業務が洪水状態(忙しい)の中で、両方やれと言われれば、やりやすく結果が見えやすい(手の付けやすい)プレイング業務などの比重が無意識的に高まってしまっても不思議ではありません。
3つめは、『方向を指し示し、その意味を語る』『メッセージを浸透させる』とは別のことを要望されていると感じていること」。
組織長になると新任管理職研修において、「『方向を指し示し、その意味を語る』『メッセージを浸透させる』というような行為は組織長の役割・仕事の1つであり、とても重要である」とレクチャーを受けます。
しかし、現場に戻ると“日々の業績を上げなければならない”というあたり前の現実が待っており、経営や部門トップからはむしろ強い業績向上や部下育成要望がなされることがほとんどです。
「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」ことを期待されるケースはあまり聞きません。
◆「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」ことはなぜ大事なのか◆
360度フィードバックを実施しての部下からのフリーコメントには、育成やコミュニケーションを要望する声とともに、以下のようなコメントも多く見受けられるのです。
「組織のありたい姿をメンバー全員に伝える場を設け、業務への動機付けをして頂きたいです。伸び悩んでいる者のモチベーションアップにつながるのでぜひお願いします」
「組織のありたい姿を、もっとメンバーへ伝えていただけると、そのありたい姿を常に思い描きながら仕事ができるのではないかと思います」
「経営や部長の考えをそのまま伝えるのではなくて、○○さん(組織長)の考えや思いを聞かせてほしいです」
このようなメンバーからの声を見ると、「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」という行動は、仕事・役割だからまたはマネジメントの教科書に載っているからするというよりも、メンバーを仕事に動機づける、メンバーに仕事の道筋を示してはたらきやすくする(つまり成果を上げやすくさせる)、そして何より組織長の本気度を示すために必要なのではないでしょうか。
いうまでもなく、このメンバーのための行為は、組織長である自分の成果にも必ずやつながるはずです。
今回は、組織長にとって「方向を指し示し、その意味を語る」「メッセージを浸透させる」ことが大切だと思う理由を書いてみました。
ただ、組織長がせっかく「方向を指し示し、その意味を語り」「メッセージを出し」ても、メンバーに伝わり浸透しているかが重要ですし、組織長としても「本当にわかってくれているかな?」「伝わっているだろうか?」と気がかりになることも多いと思います。
そんな時360度フィードバックは効力を発揮します。
設問への回答やフリーコメントを有効活用することで、組織長のメッセージが伝わっているのか、理解を得られているのかなどを確認・検証できます。
「○○さんが自分の言葉で出してくださる方針のおかげで、迷った時もそこに立ち戻れますし、何より元気になれます。」
こんなコメントをフィードバックされたら組織長冥利に尽きませんか。